当事者研究

当事者研究とは

当事者研究は、心の病を持つ人達が、自律的に自分のかかえる「生きづらさ」の意味とメカニズムを解明し、“新しい自分の助け方”を仲間等と共に、模索していく活動として始まりました。それを、契機に、身体に障害をかかえる当事者や家族が、自発的に、自由な形で当事者研究を始め、今では病気や障害に関係なく、「生きる苦労」をしていると考える人達が当事者研究の活動を行うようになっています。

当事者研究の一般的な進め方

①何がどうなっているのか? 繰り返し起きている出来事のパターンや起きている「問題」の意味を考えます。
(“問題”とは、常に何かを解消するために起きているので、問題の解決以前に、その意味を見極めます。)

②「問題」をどのように受け止め、どう対処してきたのかを明らかにします。
(これまでの対処が「不適切な行為や言動」であったとしても、その背後には辛い状況から抜け出そうとする当事者なりの生き延びるための“もがき”があり、失ったものを取り戻そうとし、自分のことを分かって欲しい、孤立から抜け出したいとするその人なりの努力だと考えます。)

③その結果と満足度を考えます。
(当事者が言い現わすニーズと当事者の本当に求めるニーズの間には往々にして違いがあり、本人はそれに気づいていない場合が多いので、その違いを見極めます。)

④従来の「自分の助け方」の満足度が低い場合は、「新しい自分の助け方」を検討し、具体的に、どのような手立てを、どのようなタイミングで用いればいいのかを考え、実践します。必要な場合は、練習します。

⑤その結果、効果を見きわめて、次の対処を考えます。

以上が、多く行われている当事者研究の展開例です。(ただし、これらは研究活動の柱であって、手順ではありません。)この様に、当事者研究では、単に「何が問題を明らかにして、みんなで解決策を見出す」と言う直線的な発想に陥らず、捉え方や見方を変えることによって、「問題」と思われていたことが重要な意味を持っていることに気づくこともあります。人によっては「病気に助けられていることがわかった」と言う発見も出てきます。当事者研究は、そのような可能性も視野に入れながら展開されていきます。

当事者研究の理念

当事者研究に、決まった形はありません。むしろ自由で臨機応変が良いとされています。その一方で、以下のような「理念」がまとめられ、活動の拠り所になっています。

「弱さ情報公開」
「自分自身でともに」
「経験は宝」
「“治す”よりも“活かす”」
「“笑い”の力 - ユーモアの大切さ」
「いつでも、どこでも、いつまでも」
「自分の苦労をみんなの苦労に」
「前向きな無力さ」
「“見つめる”から“眺める”へ」
「言葉を変える、振る舞いを変える」
「研究は頭でしない、身体でする」
「自分を助ける、仲間を助ける」
「初心対等」
「主観・反転・“非”常識」
「“人”と“こと(問題)”をわける」